鬼頭莫宏先生は三浦可淡のお人形がお好きらしい。
という噂を聞いて以来、気になっていた、こちらの作品。
この物語はヴァンデミエールという人形たちをめぐる物語だ。
その世界観はまるで、19世紀のヨーロッパの様でもあるし、どこか遠い架空の世界の物語のようにも思える。
ここに出て来る人形たちは、姿かたちは多少違いがあるけれど、同じ名前を付けられた何かの代他品のような、そんな印象の作品たちである。
彼女たちは自意識を持ちながら、個性を与えられず、“ヴァンテミエール”に回帰する。
あんなに反抗的で攻撃だったヴァンテミエールも。
姉の人格をそっくりそのまま映したヴァンテミエールも。
結局は“ヴァンテミエール”として覚醒し、その命を終える。
そしてヴァンテミエールはヴァンテミエールとしての自分を火葬して、新たな生の道を歩き出す。
翼をもぐことで彼女自身が彼女の呪縛を解き放ったその、目が、大きな飛行機を見つめ「なんて力強い 黒い大きな翼」と呟くその表情の、なんと晴れ晴れとした事か。
この作品には親子の供依存の話が二つもある。
ひとつは殻を破り外界へと飛び立ち、ひとつは繭に囚われ閉じ込められる。
一番始めの話にも、親からの押し付けへの嫌悪感を催される様な表現があったりする。
この物語は、子供から大人へと羽化する、個の誕生の物語を一番、描きたかったのでしょうか?
不思議と、生きる事の素晴らしさを感じさせる、心地のいい物語でした。
最後に、鬼頭先生の描く女の子は不思議なフェティシズムを感じるなぁとは思ってましたが、今回の自律胴人形たちをみて、鬼頭先生はやっぱりこの体の造形にこだわりがあるのだろうなぁと思いました。
よいですよね、鬼頭先生の描く、女の子たちって。
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